第3章
便失禁診療の概論
5. 治療法

薬物療法:ロペラミド塩酸塩1

  • 軟便を伴う便失禁に対してロペラミド塩酸塩は有用であるが、便秘症の副作用に注意して症例ごとに用量を適量化する必要がある。
  • 軟便を伴う便失禁において、ポリカルボフィルカルシウム3g/日でも便性を十分に固形化できず便失禁が十分に改善しない場合は、
    ロペラミド塩酸塩を追加投与してブリストル便性状スケールでタイプ3~4を目標に便性を調整する。
  • 1カプセルに含有される1mgでも便秘症状を呈する場合には細粒を用いて0.5mg/日から次第に増量する。
  • 保険診療上は2mg/日が上限であるが、NICE(National Institute for Health and Clinical Excellence )のガイドラインでは
    用量依存性に効果があり安全な薬剤であるため便性が目標に達するまでは16mg/日まで増量することが可能だと推奨している。
  • ただし2016年6月に米国食品医薬品局が、ロペラミド塩酸塩の濫用(副作用発生例の平均内服量:195mg/日)による
    重篤な不整脈を副作用として警告しているので注意が必要である。